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『震える天秤/染井為人』

今回は、染井為人著「震える天秤」です。

早速、簡単に紹介していきます。

 

1.作品情報

著 名:震える天秤

著 者:染井為人

出版社:角川文庫

発売日:2022/8/25 ※文庫本の初版発行日

頁 数:388ページ

 

こちらは、「高齢者の運転問題」を取り上げつつも、予想外の展開にストーリーが発展していく社会派ミステリです。

最後まで読み終わった後、きっと『震える天秤』というタイトルがもつ意味に合点がいくと思います。

 

2.あらすじ

高齢男性の運転する軽トラックがコンビニに突っ込み、店員を轢き殺す大事故が発生。アクセルとブレーキを踏み違えたという加害者の老人は認知症を疑われている。事故を取材するライターの俊藤律は、加害者が住んでいた奇妙な風習の残る村・埜ヶ谷村を訪ねるが……。「この村はおかしい。皆で何かを隠している」。関係者や村の過去を探る取材の末に、律は衝撃の真相に辿り着く――。横溝賞出身作家が放つ迫真の社会派ミステリ。

「震える天秤」裏表紙より引用

主人公の俊藤律が、高齢者による交通事故を取材するところから、思いがけない方向に話が進んでいきます。

事故の真相は何なのか、『震える天秤』がもつ意味は何なのか、が見どころです。

ぜひ、事故の真相を予想しながら、読んでみてください。

 

3.こんな人におすすめ

  • ミステリが好き

 

4.こんな人には向いていないかも?

  • すみません、特に思いつかなかったです

 

5.感想

ここからは、私の正直な感想を綴ります。
個人の感想なので、共感していただけないこともあるかと思いますが、ご容赦ください。
また、ネタバレや、ネタバレと感じられる内容が含まれていますので、ご注意ください。

ずばりタイトルの通り、天秤が震えていましたね。

本作を読んだ方は、自分が律の立場だったらどちらを選ぶだろうかと考えたのではないでしょうか。

私は本記事執筆時点で、明確な答えは出せていませんが。

 

「震える天秤」というのは、律だけでなく落井正三にも当てはまるのかもしれません。

最終的には身体がいうことを聞かなかったということですが、そこに至るまでには、殺すのか殺さないのかという天秤が震えていたようですね。

決して殺人を肯定するわけではありませんが、その天秤にも「正義」とは何かを考えさせられました。

 

高齢者の運転問題については、作中でも解決はしていないですが、道路を改善すればある程度の事故は防げるという話は、私にとっては新鮮でした。

普段ニュースを見ていると、免許を返納させたり、運転を自動化させたりなど、車の方に焦点が当てられがちですが、たしかに道路を変えてしまえば防げる事故もありそうですし、予算を無視すればそちらの方が実現しやすそうに思いました。

 

最後に、本作を読んで、いつか自分にも免許を返納するときが来ることを想像してみたのですが、2023年現在ではまだ他人事という感覚がぬぐい切れません。

おそらく、免許を返納していない高齢者も同様なのかなと邪推してしまいました。

以上、『震える天秤/染井為人』の紹介と感想でした。